食味値とは、食味計と言われる機械を使った成分検査結果で、美味しさを数値化したものです。
どういう成分が多いと人が美味しく感じるのか?などの統計的な結果からある程度の目安を設定し大まかな美味しさの基準をはじき出してくれます。今後米の味の良し悪しを比較又は表現する際にある程度の目安として使っていけるのではないかと期待されています。
食味計を作っている会社はいくつもあり、それぞれに設定が違うので、同じ米を測っても機械によって数値は異なります。まだまだ発展途上な機械のため、各社基準作りに取り組んでいる最中でさらなる改良の余地がありそうです。
そのため、ある程度の信頼性はある数値ですが、絶対ではない『ある程度』という性能ゆえにどのコンクールでも最終審査は人による実食審査を実施しています。
しかしながら、米をいくつかの審査員グループに分けて実食審査をするとグループごとの審査員の味の好みの偏りによって審査にブレが生じる恐れがあります。そのためほとんどのコンクールでは検体数の多い予選審査においては、この食味計による食味値等の機械審査による予選審査を実施しているのが実情です。(そういう面では『お米番付』は応募検体数を200以下と制限し、審査委員様方の多大なご苦労で、予選からの全検体実食官能検査をされているのは特殊と言えます。)
京都辻農園で栽培している『ヒノヒカリ』という品種は、日本における栽培面積が『コシヒカリ』『ひとめぼれ』に次ぐ第3位という日本全体の1割弱の田で作られている生産量の多い品種です。単位面積当たりの収穫量が少ないこの品種がなぜこんなに多く栽培されているのでしょうか?
『ヒノヒカリ』は『コシヒカリ』を父に『黄金晴』を母に持つ『コシヒカリ』の改良品種で、『コシヒカリ』の子供らしく味は『極良』と区分されています。そして改良点は最近の地球温暖化による気温上昇に対しての作りやすさです。そのため平均気温の高い九州などを中心とした西日本で多く栽培されているわけです。
試験場などの食味官能検査結果が『極良』、そして実食のみで審査される『お米番付』において、最優秀8選のうちに2つ選ばれた『ヒノヒカリ』ですが、多くのコンテストで上位に入ることはありません。なぜか品種特性上食味計の数値の出にくい品種と言われているのです。
食味計では『タンパク質』の含有量を測りそれが少ないと数値が高くなるように設定がなされているのですが、タンパク質の種類は無数にあり体内に取り込まれて再構成されるタンパク質だけでも10万種類以上あるそうです。その中の一部(米のタンパク質全体の1~2割のもの)に米の味を悪くする人体に消化不良なタンパク質が確認されているため、『タンパク質が少ない米が美味しい米』であるかのように言われがちなのですが、実は美味しさの素とされている『アミノ酸』は人に消化されやすいタンパク質を消化して出来てくるものなので、『ただ単純にタンパク質を下げれば良いわけではない』という研究者もおられます。私の尊敬する『米の神』石井稔様とお話をさせて頂いた時にも全く同じことを言っておられました。
『タンパク質』=悪 ではない!
『タンパク質』の種類が問題なのだということのようです。品種によって含まれる『タンパク質』の構成は違ってくるために、今の食味計の設定では品種ごとの食味値の偏りが出来てしまうという話にはある程度納得が出来ます。
今後さらに分析能力の向上・タンパク質ごとの性質の把握などが進み、食味計でより正確な美味しさを測定できれるようになれば、きっと一般消費者様の選択に大きく貢献ができると思います。一日も早くそのような日が来ることを望んでおります。