当家の栽培している品種『ヒノヒカリ』は西日本の気候に合った品種です。しかし、いくらその地方に合った品種と言われてもいつ植えるかによって出来は(特に食味は)違ってきます。
その最も最適な作付け時期はいつなのか?
当家の地域では比較的皆さん野菜に力を入れており、稲作にはかなり無関心です。なので『当地域での適期がいつなのか』なんてことは誰も教えてもくれませんし、誰も考えていません。自分で確認していくしかありません。
毎年とにかく全ての田で出来た米を食べ比べ評価し、出来は土壌の差でも変わってくるため、『時期の差』による差だけを確認するのは一年では出来ません。ですから次の年は作付けの順を変えてみてはまた食べ比べ評価する、と言うデータを蓄積していきました。
その長年の蓄積データから、6月20日過ぎが安定して良い結果を残せていると言うことが分かってきました。
(食味だけを追求すれば6月25日前後が最も安定して良い結果を出しています)
ところがつい数年前まで当家の地域の通水日は5月20日頃で、なんと理想の適期から1ヶ月も早く作付けしている人がほとんどでした。
当家は当家の理想を追求し、6月10日頃~6月末日に向けた3週間の時期に作付けを実施しています。すると皆とのズレで数々の困難が生じます。主に水の困難です。(実はここには数限りない無駄や余分な労力が多々あるのですが)
こんなこと作付けのこだわりと呼ぶ内容でもありませんし基本は省略するとして、どうしてもこだわった点は何なのかについてのみ書かせて頂きます。
それは
『登熟期の気温です』。
皆様のイメージに北陸から東北・北海道にかけての『寒い地方が良い米のとれる地方』と言うイメージはありませんか?きっと間違いではないと思います。万年雪をたたえた山々から冷たく養分豊富な水が絶え間なくこんこんと流れてくる。うらやましい限りです。こんなことは真似できませんから何とか調整できる部分はないか?
それが『登熟期の気温です』です。登熟期に暑い日が多いことは『高温障害』を起こして米の質を下げます。『より良いタイミングで開花』をさせ、『より良いタイミングで登熟』をむかえさせることにこだわり、『登熟期の気温』がある程度低い温度になるように、作付け時期を追求したのです。
どんなに周囲からの反発を受けようとも屈せずにこの作付けをくり返しました。その結果、周囲が高温障害に悩まされた時も、当家ではほとんど被害がなく、食味の安定はもとより定評がありましたので、それらの結果をやっと周囲が認めてくれ、色々あった後、数年前からなんと通水日が6月7日と改定されました。
まさにベストなタイミングです。京都府南部では我が町だけがこうした変更を行いました。快挙です。
障害に屈せずに良いものを作り続けたご褒美のようなものと神に感謝し、今後気候の変動があっても、毎年のデータからそれに対応をしていきたいと決意を新たにしました。
先日、研究機関の試験結果を聞く機会がありました。当地域での最も良い作付けのタイミングは6月20日とのこと。なぜもっと早く発表してくれなかったんだ! しかし、おかげで自分で見極める能力がついたので良しとしましょう。
次回からは、当家の苗の植え方についてお話しさせていただきたいと思います。
実は、当家の地域では『田んぼを見たら辻さんの田は一目で分かる』と言われています。
それほど明らかな違いがある特殊な田んぼ(と言うか植え方)なのです。
『籾』(もみ)… お米の周りにまだ硬いからがついた状態の粒のことです。
『籾殻』(もみがら)…籾の周りの「から」の部分のことです。
『玄米』(げんまい)…籾から籾殻を取り除いた状態の米粒のことです。
『精米』(せいまい)…玄米の周りにある薄皮部や胚芽などを取り除く作業のことです。
『糠』(ぬか)…玄米(本当は穀物全般)を精米した際に取り除かれて出てきた、薄皮や胚芽の粉。
『白米』(はくまい)…玄米を精米し、糠や胚芽が取り除かれた白い米粒のことです。
精米して出来た白米のことを、単に『精米』又は『精白米』と呼ぶこともあります。
『穂(稲穂)』(ほ/いなほ)…稲の花が咲き(そのうち写真で紹介します)
その後『籾』になったものが房のようにいくつも連なって付いているものです。
ブドウ(巨峰のような)と比べてみると、『房』→『稲穂』、『一粒』→『籾』、『外の皮』→『籾殻』、『皮をむいた中身』(果肉の周りに紫っぽい部分がついている)→『玄米』、『果肉の内側』(薄緑の部分)→『白米』といった感じです。あくまでも個人的イメージです。
『刈り旬』(かりしゅん)… ちょうど良い刈り頃のことです。
『刈り遅れ』(かりおくれ)…「刈り旬」を逃して刈る時期が遅れてしまった状態のことです。
『登熟』(とうじゅく)…本来しっかりと熟した「完熟」に向け熟していく過程のことですが、「完熟した状態」を「しっかり登熟した状態」のように、完熟と同義語的ニュアンスで使用することもあります。
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