前回、乾燥作業における『意外なムラの素』についてお話しました。
今回は、
『乾燥ムラをなくす当家のこだわり』
についてお話しさせていただきます。
乾燥機による乾燥ムラをなくすため、当家では大胆な手法に打って出ました。乾燥機の改良並びに改造です、
『メーカー保証は受けられなくなります。下取りも利かなくなります。』
でも一年間丹精込めて作ってきた米を台無しにしたくない、米が本来持っている能力のまま世に出したい。より良い米として消費者様に届けたいのです。
まずは、前回の『①-④意外なムラの素』<2>において『追加張り込みの際の循環停止』を防ぎます。機種によっては循環量を調節しつつ、後から張り込む籾を均一に混ぜながら循環できるように改良・改造をしています。しかも絶妙な経験による技で第1層の循環が何分かかるものかを正確に見極め、例えば17分かかるものなら『混ぜながらの追加張り込み作業』を17分で完了するように混合量を調節して、混合作業を終了するようにしています。そうしないと、いくら混ぜながら作業しても、どうしても第2層の割合の多い部分と少ない部分のようなムラが残るからです。
そしてこの改造による手法は第1便の『張り込み』の場合でも実施しています。今張り込み始めた籾さえ、すぐに循環させ全体をまんべんなく混ぜるのです。トラックに積んだ搬送用のグレンタンク内の籾でさえその中にムラの元は存在するからです。こんなにこだわって『まんべんなく混合』することに労力を費やしている生産者を他に見たことはありません。
こんなに『まんべんなく混合』することにこだわっているのは乾燥という現象の特性を利用し
『さらにムラを減らしたい』
からなのです。その特性とは次のようなものです。
『濡れたタオル』と『乾いたタオル』をイメージして下さい。濡れたタオルの上に乾いたタオルを置くとどうなりますか?
『乾いたタオルは元よりは濡れ』
て
『濡れたタオルは元よりは乾く』
と思いませんか?そうなんです。水分は隣り合ったもの同士で移動し合い、より『平均化する』という性質を持っています。
でも濡れたタオル10枚の上に乾いたタオル10枚を置くとどうなりますか?全部が平均化はしませんよね?触れ合っている近辺でのみ水分の移動が起き、せいぜい境目の1・2枚程度で平均化が起きる程度だと思います。これが通常の生産者の乾燥機の中身と同じ状態です。
でもこの濡れたタオル10枚と乾いたタオル10枚が1枚ずつ交互に置かれていたらどうですか?全体でまんべんなく同じような平均化がおきますよね?私が本当に苦労して実施している混合作業は、
『この1枚ごとのタオルのような状態を作り出すため』
のものなのです。
前回の『①-④意外なムラの素』<1>の最後で、蒸れ防止に『乾燥作業を伴わない循環』を行います、と書きました。刈り取り直後の籾はそのまま放置するだけで蒸れる、つまり『水分が移動できる状態にある』のです。まして乾燥を始めて熱風をあてるとさらに水分が移動しやすい状態になります。その時にまんべんなく混合がなされていれば、『乾燥作業を伴わない循環』などによって生じた少しの乾燥ムラさえ長時間乾燥の中できれいに解消されていくのです。
次回は『こだわり① 究極のゆっくり乾燥乾燥』のいよいよラストになります。次回もおつきあい宜しくお願い致します。
『籾』(もみ)… お米の周りにまだ硬いからがついた状態の粒のことです。
『籾殻』(もみがら)…籾の周りの「から」の部分のことです。
『玄米』(げんまい)…籾から籾殻を取り除いた状態の米粒のことです。
『精米』(せいまい)…玄米の周りにある薄皮部や胚芽などを取り除く作業のことです。
『糠』(ぬか)…玄米(本当は穀物全般)を精米した際に取り除かれて出てきた、薄皮や胚芽の粉。
『白米』(はくまい)…玄米を精米し、糠や胚芽が取り除かれた白い米粒のことです。
精米して出来た白米のことを、単に『精米』又は『精白米』と呼ぶこともあります。
『穂(稲穂)』(ほ/いなほ)…稲の花が咲き(そのうち写真で紹介します)
その後『籾』になったものが房のようにいくつも連なって付いているものです。
ブドウ(巨峰のような)と比べてみると、『房』→『稲穂』、『一粒』→『籾』、『外の皮』→『籾殻』、『皮をむいた中身』(果肉の周りに紫っぽい部分がついている)→『玄米』、『果肉の内側』(薄緑の部分)→『白米』といった感じです。あくまでも個人的イメージです。
『刈り旬』(かりしゅん)… ちょうど良い刈り頃のことです。
『刈り遅れ』(かりおくれ)…「刈り旬」を逃して刈る時期が遅れてしまった状態のことです。
『登熟』(とうじゅく)…本来しっかりと熟した「完熟」に向け熟していく過程のことですが、「完熟した状態」を「しっかり登熟した状態」のように、完熟と同義語的ニュアンスで使用することもあります。
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