まずは一般的な機械乾燥の最大のデメリットから先にお話いたしましょう。
一般的な機械乾燥(というか多くの農家さんのやり方)では、短時間に乾燥を仕上げるために
高温熱風で急速乾燥させる
ので、米の『風味』といいますか『香り』、そして『甘み』を損なわせます。
何事もそうですが急激な変化、急激なダメージはストレスを与え色々な変質をもたらします。時にこの変質が良い方向に働くものもあるとは思いますが、残念ながら今の所、急速乾燥で米が美味しくなったと感じたことはありません。では
なぜそんなに急速乾燥するの?
という疑問がわいてきます。
ここに当家の多くのこだわりを生んだ原因である、世間の
『食味向上に向けては、あまり良くない効率化』
があるのです。(これは後からも何度か出てまいります)
最近の農家の方々は、得手して効率化を図るため『同じ作業を一時期に集中してやろうとする』傾向にあります。当家でも大筋まとまって作業はしますが、多くの方がされている作業はあまりにも食味的に後先を考えておられないように思えます。
一番問題なのは『田植え』
です。田植え機の性能が向上したためすごくスピーディーに田植えができるようになりました。(私が子供の頃の手植えからは想像も出来ないスピードです)そのために多くの農家の方はほんの数日間で全ての田植えを終えてしまうのです。当家の作付け面積なら大抵の場合、通常の農家さんは3日間で植えてしまいます(当家は3週間ほどかけて植えます)。
それの何がいけないの?
田植えはそのスピードで出来ても稲刈りはそんなに速くは出来ないのです。その結果、同じタイミングで植えた稲たちは、同じように育ち、同じタイミングで『刈り旬(ちょうど良い刈り頃)』を迎えます。
でも稲刈りは3日ではできません(当家は3週間前後かかります)。結果として『刈り旬』を逃し、『刈り遅れ』が生じて『米の味を台無し』にしてしまう方が大勢おられます。
逆に『刈り遅れが嫌な人』の場合は、しょうがなく少し早目から稲刈りに入ります。そうすると今度は『登熟(米がしっかりと熟した完熟のようなもの)』を待たずに『青いまま刈る』ことになり『米の味を出し切れずに終わる』のです。
いずれにしましても、まとまって田植えをすると全部の田んぼの『刈り旬が一気に到来』してしまい、ベストなタイミングを逃してしまいがちです。そこで皆様のやり方の場合、その唯一の防止策が『毎日出来るだけ多く刈る』となってしまい、結果として『大量の籾(※)を急速乾燥してしまわないといけない』と言うことに繋がるのです。
『籾』(もみ)… お米の周りにまだ硬いからがついた状態の粒のことです。
『籾殻』(もみがら)…籾の周りの「から」の部分のことです。
『玄米』(げんまい)…籾から籾殻を取り除いた状態の米粒のことです。
『精米』(せいまい)…玄米の周りにある薄皮部や胚芽などを取り除く作業のことです。
『糠』(ぬか)…玄米(本当は穀物全般)を精米した際に取り除かれて出てきた、薄皮や胚芽の粉。
『白米』(はくまい)…玄米を精米し、糠や胚芽が取り除かれた白い米粒のことです。
精米して出来た白米のことを、単に『精米』又は『精白米』と呼ぶこともあります。
『穂(稲穂)』(ほ/いなほ)…稲の花が咲き(そのうち写真で紹介します)
その後『籾』になったものが房のようにいくつも連なって付いているものです。
ブドウ(巨峰のような)と比べてみると、『房』→『稲穂』、『一粒』→『籾』、『外の皮』→『籾殻』、『皮をむいた中身』(果肉の周りに紫っぽい部分がついている)→『玄米』、『果肉の内側』(薄緑の部分)→『白米』といった感じです。あくまでも個人的イメージです。
『刈り旬』(かりしゅん)… ちょうど良い刈り頃のことです。
『刈り遅れ』(かりおくれ)…「刈り旬」を逃して刈る時期が遅れてしまった状態のことです。
『登熟』(とうじゅく)…本来しっかりと熟した「完熟」に向け熟していく過程のことですが、「完熟した状態」を「しっかり登熟した状態」のように、完熟と同義語的ニュアンスで使用することもあります。
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